痙縮

演習問題5:痙縮Spasticity

内包の出血などにより出現する痙縮は、脊髄反射の病的亢進状態である。

設問
1)痙縮には、いかなる脊髄反射が関係しているか?また、筋の受動的伸張や腱の単打に対する反応、誘発筋電図にどのような所見が得られるかを説明しなさい。

ガイドンp710
橋網様体系(興奮性と抑制性で筋緊張を調整する可能にする仕組み)、延髄網様体系、前庭神経核
頸部、体幹、四肢の伸筋
 
脊髄内の伝導路の下行路
大脳皮質、赤核、大脳基底核からの延髄の網様体核(皮質脊髄路、赤核脊髄路、その他の運動路)ヘの興奮入力が断たれる


2)痙縮の出現の機構として、どのような可能性が考えられるか?

脳卒中でみられる後遺症のひとつに痙縮(けいしゅく)という症状があります。筋肉が緊張しすぎて、手指が握ったままとなる、肘が曲がり、洋服の袖が通せないなどの症状がみられます。

脳で筋肉を動かそうと思うと、命令は脳で加工され、脊髄を通って脊髄にある運動神経に伝わり、

脳血管障害や脳性麻痺による痙縮(手足のつっぱり、足がカタカタするクローヌス)や、ジストニア(痙性斜頚、眼瞼痙攣)、片側顔面痙攣、顔面神経麻痺後の病的共同運動等の患者さんを対象に、治療を行っています。

運動神経が興奮して筋肉が動きます。脳からは抑制性の命令も届き、腕を曲げる時は腕を伸ばす筋肉に力を緩める命令が届きます。
脳から運動神経までの経路が損傷されると、脳からの信号が届かなくなります。動かすための命令が届かないと筋肉は動かなくなり、麻痺します。抑制性の信号が届かなくなると、反射を抑えていた信号が無くなり、脊髄の運動神経が勝手に興奮して筋肉が動き、痙縮を呈します。
脳から脊髄のどこか(あるいは両方)を壊してしまう病気やけがは痙縮の原因になります。外傷による損傷、血管からの出血による周囲の組織の圧迫、血管がつまることにより組織が壊死する梗塞、神経が変成してしまう疾患、脊髄の通り道の脊柱管の変形などで経路が障害されます


演習問題6:大脳皮質運動野motor cortexの障害
【症例】65歳男性。健康診断で高血圧と心房細動を指摘されていた。ある朝、突然右手に力が入らなくなり受診した。

皮質脊髄路(錘体路)
大脳皮質(運動野)からは外側皮質脊髄路、内側皮質脊髄路 、皮質橋核路、顔面神経へと接続する経路の4つがでている。
外側/内側皮質脊髄路は延髄の錐体を通過する形で脊髄前角へと投射して、 α運動ニューロンへと接続する。 皮質橋核路は小脳→視床VA+VLor赤核へと進み、求心的に運動を調節する。顔面神経核へと接続する経路は額部と頬部の表情筋を調節する。
大脳皮質を経ない運動路は錐体外路と呼ばれる。 錐体外路は赤核脊髄路、上丘(視蓋)脊髄路、前庭脊髄路、間質核脊髄路、網様体脊髄路の5つが該当し、これらは延髄の錐体を通らずに脊髄前角に投射する。
赤核脊髄路は屈筋を支配し、カハール間質核は頭の垂直方向の筋を支配、上丘脊髄路は頚髄筋を支配する。前庭神経核の内部で運動路に関わるのは 外側核と内側核で、外側核は四肢の筋を、内側核は頸部の伸筋を支配する。図には出ていないが、これらの経路は大脳皮質により間接的に調節 されている。
網様体脊髄路は図では省かれているが、これについては上行性網様体賦活系のところで記述することにする。
淡蒼球-線条体-黒質経路は視床VA+VL核を経て 大脳皮質へ投射するが、経路自体は錐体を通らないということと、ここを傷害されると錐体外路障害(パーキンソン病)を生じるため、 錐体外路系に含める。
 
錐体路は脊髄前角の細胞体とシナプスを形成した後、α運動ニューロンに接続し、骨格筋を収縮させる。錐体外路もまた前角の細胞体 とシナプスを形成するが、αではなくγ運動ニューロンに接続し、筋紡錘を伸展させる。
γ運動ニューロンによる筋の統率は意識にのぼらない 運動で、例えば、緊張して肩がこるような無意識のうちに力が入るようなときの事を指す。筋紡錘の伸展に応じて、Ia繊維による求心性 のインパルスが生じる。Ia繊維は脊髄後角から入り、一部は介在ニューロンを介して再び脊髄前角へと入力される。
この循環を断つのが テルネリン、ミオナールといった筋弛緩薬である。 運動神経線維は求心性、遠心性問わずAα繊維である。



体性感覚野と運動野はいずれも頭頂葉にあり、感覚野は求心性、運動野は遠心性の脳領域です。

私たちが肌に触れるもの、身体の位置や筋肉の伸び具合などは電気信号として求心性神経を通して脊髄を上行し、頭頂葉に到達します。
あくまで例えば触ったものは脳にその情報が到達されて始め知覚されるわけで、その伝導路に障害があれば感覚性麻痺が生じますし、逆に感覚野に電気信号を加えると触ってないのに感じることができます。
“夢の中でも感覚はある”というとイメージが湧くでしょうか。

運動野は前頭葉、感覚野、小脳、大脳基底核などと連携して実際に筋肉を動かす電気信号を発生します。
運動野から出た電気信号は大脳基底核や小脳の修飾を受けて脊髄を下行し、筋肉に働くことで筋肉の収縮を発生させます。

運動野は運動の指令を出す神経細胞が集っている部分。
自分の意志で目や腕を動かす随意運動の指令を出すところ。ここでも「交差支配の原理」が働いている。


右脳の運動野から指令が出ると体の左側の筋肉収集が起こり運動となる。
その為、右脳の運動野に障害を受けると左半身が不随になってしまう。


ところで、言葉を話す顔や表情を作る顔、作業を行う手は繊細な動きが要求される。
従って、その部分の筋肉と関係する運動野の神経細胞の数は他の部分より多くなっている。


運動野の中で神経細胞が多いのは、顔と手に関する部分。繊細で複雑な動きが要求される為。


これを調べたのはカナダのペンフィールドと言う脳外科医で、運動野を電気刺激して体の各部との関係を明らかにしてペンフィールドマップを作成した。


発声や手に関する部分は運動野の中で広くなっている。


言葉や道具を使う人間らしい仕組みここに見て取れる。


設問
1)最も考えられる疾患は何だろうか?

2)どのような所見に注意して診察をすればよいか?
反射 感覚 
3)確定診断をするにはどうのような検査が必要か?
MRI